製造現場で起こる設備トラブルは、しばしば「突然の故障」と表現されます。しかし実際には、多くの設備故障はある日突然発生するのではなく、目に見えない小さな異常から段階的に進行しています。問題は、その“初期兆候”に気づけるかどうかです。
設備故障は静かに進行している
モーター、ポンプ、ファン、減速機などの回転機器では、ベアリングの摩耗やボルトの緩み、芯ズレ、アンバランスといった異常が、最初から大きなトラブルとして現れることはほとんどありません。
初期段階では、
・わずかな振動の変化
・ごく小さな周期ズレ
・数値にしか現れない違和感
といった形で進行します。この段階では異音や発熱もほとんどなく、人の五感や目視点検では気づけないケースが大半です。
なぜ「振動」が初期兆候として重要なのか
設備異常の中で、最も早く変化として現れやすいのが振動です。
回転体を持つ設備は、正常時でも一定の振動を発していますが、部品の摩耗やズレが生じると、その振動パターンがわずかに変化します。
音や温度は異常が進行してからでないと変化しにくい一方、振動は異常の“始まり”を捉えやすいため、予兆保全において非常に重要な指標とされています。また、振動計測には下記のような利点もあります。
・感度が高いので、早期診断に優れている
・取得できる情報が多く、解析手法が確立されている
巡回点検だけでは初期兆候を捉えにくい理由
多くの現場では、定期的な巡回点検や月次点検が行われています。しかし、点検で把握できるのは「その瞬間の状態」だけです。異常は必ずしも点検のタイミングで顕在化するとは限らず、点検後から異常が発生することもあり得ます。また、点検の精度が作業者の経験や勘に依存しやすい点も、大きな課題です。
振動監視がもたらす大きな価値
振動監視を導入することで、設備の状態を連続的に把握できるようになります。
これにより、
・故障前の傾向変化を数値で把握できる
・突発停止を防ぎ、時間基準保全から状態監視保全へ移行できる
・過剰な分解整備や無駄な交換を減らせる
・保全業務の属人化を防げる
といった効果が期待できます。
振動監視を「現場で使える仕組み」にするために ― 無線式という選択
振動監視が設備故障の初期兆候を捉えるうえで有効であることは理解できても、実際の現場では「導入が大変そう」「工事が必要なのでは」「運用できるか不安」といった理由から、導入が進まないケースも少なくありません。
そこで重要になるのが、現場に無理なく導入できる監視システムであるかどうかです。
配線・工事がネックになっていませんか?
従来の振動監視システムでは、
・配線工事が必要
・設置場所が限定される
・増設がしづらい
といった課題がありました。特に既存設備が多い工場では、「良さは分かるが現実的ではない」という判断に至ることも珍しくありません。
無線式振動監視システム「WASABI」という選択肢
イージーメジャーが提供する無線式振動監視システム「WASABI」は、こうした現場のハードルを下げることを目的に設計された振動監視システムです。センサは磁石等で容易に設置ができ、無線でデータを飛ばすため配線工事を必要とせず、既存設備にも後付けで導入可能です。「まずは重要設備から」「一部ラインだけ試したい」といった段階的な導入にも対応しやすく、現場の負担を最小限に抑えられます。


“異常が起きてから”ではなく“変化に気づける”運用へ
WASABIは、振動データを継続的に収集・可視化することで、設備の状態変化を「感覚」ではなく「データ」で把握できる環境をつくります。また、設備のメンテナンスにおいて、すべての機械に複雑な精密診断機器を導入するのは、コストや時間の面で現実的ではありません。そこで、無線式振動監視システムWASABIでは、「実効値(RMS)」と「PEAK値」という2つの指標を定点観測することで、数値の変化を追う(トレンド管理)を行い、精密診断よりもシンプルかつ効果的に状態監視を行います。

これにより、
・現場担当者がいつもと違う変化に気づきやすい→巡回業務を減らせる
・夜間、無人時間帯の状態把握→省人化が実現できる
・故障前の傾向変化の共有→勘・経験からデータで表現できる
・保全業務の属人化を防ぎながら、計画的な対応につなげることができます。
初期異常を逃さずキャッチする
WASABIは10KHz帯域の振動まで捉えることができます。これは状態監視にはかなり大きなメリットがあります。10kHz応答は加速度(g)の監視に不可欠です。振動には「変位・速度・加速度」の3種類があります。高周波の監視には加速度(Acceleration)が用いられます。
1kHz以下(速度領域):アンバランス、芯出し不良、ボルトの緩みなど。
10kHz以上(加速度領域):ベアリングの剥離、潤滑不良、ギアの欠けなど。 物理的に、周波数が高くなるほど「加速度」の値は大きく現れる性質があるため、10kHz対応のセンサを使うことで、微小な不具合を大きな信号として捉えることができます。
例えば
ベアリングの「初期傷」は高周波に現れる
1kHz応答: 衝撃が速すぎて、平均化された振動の中に埋もれてしまい、異常として検知できません。10kHz応答: 鋭く立ち上がる高周波の衝撃波を正確にサンプリングできるため、故障が深刻化する前の「初期段階」で発見できます。
潤滑不良(油膜切れ)を検知するため
故障に至る前段階の「潤滑不良」を見つけるには、10kHz応答が不可欠です。
潤滑が不足すると、金属同士が微細に接触し、超音波に近い高周波の摩擦音が発生します。この微弱な高周波成分は、1kHz程度の低周波領域には現れません。10kHz応答で「加速度」を監視することで、「傷がつく前の、油が切れた状態」を数値の上昇として捉え、焼き付きを未然に防ぐことができます。
おわりに
無線式振動監視システムWASABI は、これまで人が巡回していた多くの回転機等の異常の初期減少である振動を測定して、遠隔で常時把握することが可能になる監視システムです。状態監視で求められる10KHz帯域まで応答し、「実効値(RMS)」と「PEAK値」という2つの指標を定点観測することで現場の担当者が容易にいつもと違う「異常」を捉えることが可能になります。