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コラム

WASABI

設備の状態監視における役割と判定手法~簡易診断による予知保全の実践~

近年、製造現場やインフラ設備において、従来の「壊れてから直す(事後保全)」や「決まった期間で部品を替える(時間基準保全)」から、設備の状態をリアルタイムで把握して必要な時だけメンテナンスを行う「状態監視保全(CBM:Condition Based Maintenance)」への移行が進んでいます。状態監視の導入は、突発的な故障によるライン停止リスクを低減し、過剰な部品交換コストを抑制する上で極めて有効です。

状態監視の二段構え:スクリーニングと特定

効率的な状態監視を行うためには、すべての設備に対して詳細な分析を行うのではなく、まずは「簡易診断」によって広く浅く異常の有無をスクリーニングし、異常が認められたものに対してのみ「精密診断」を行うという2段階のステップを踏むのが一般的です。これは、医療における「健康診断」と「再検査・精密検査」の関係に似ています。状態監視の入り口となる「簡易診断」に焦点を当て、その具体的な判定手法、評価に用いる指標(実効値・ピーク値)を解説します。

簡易診断の目的-平常時と変化を見つけること

簡易診断の目的は、「異常を早期に検出すること」「設備の状態を劣化傾向管理により定量的に管理すること」「精密診断対象設備の抽出」などです。設備の健康状態を数値化し、平常時と比較して「変化」があるかどうかを確認します。

簡易診断の方式

設備毎に生産停止に直結するかどうかで重要度(S,A,B,Cランクなど)を決め、劣化速度によっても設備の監視周期が変わります。大きく分けて2つのパターンになります。
・間欠監視(巡回点検)方式-重要度が低い設備、劣化速度が遅い設備
・常時連続監視方式-重要度が高い設備、劣化速度が速い設備

異常を発見する手法

主に振動の大きさの総量を示すOA値(オーバーオール値)や、温度、異音などが指標となります。診断結果を判定する手法には、主に以下の3つが挙げられます。

絶対判定方法
絶対判定方法とは、ISO基準値あるいは設備メーカーが設定した振動速度値に基づいて「機械全体振動の判定」と現在の測定値を直接比較する方法です。過去のデータが蓄積されていない新規導入設備でも、即座に良否の判断が可能です。ただし、設備の設置環境や剛性によって振動の伝わり方が異なるため、規格値が必ずしも個別の機械に最適とは限りません。

■相対判定方法
同一箇所の振動値を時系列で管理し、初期値(正常時)からどの程度増加したかを評価する方法です。一般的には、初期値の2~3倍を「注意」、4倍以上を「異常」とするなどの運用を行います。個体差を排除できるため、予知保全において最も簡易的に判定が可能です。

■相互判定方法
同型・同条件で稼働している複数の設備(例:並列設置された複数のポンプ)の測定値を比較する方法です。基準値が不明な場合でも、一台だけ突出して高い値を示せば異常の蓋然性が高いと判断できます。

振動評価の重要指標:実効値(RMS)とピーク値(PEAK)

簡易診断において、測定した振動波形からどのような数値を抽出するかは、異常の種類を見極める上で極めて重要です。

実効値(RMS:Root Mean Square)
実効値は、振動波形のエネルギーの大きさを表す指標です。一定時間の振動エネルギーを平均化したものであり、機械全体の「疲労度」や「摩耗」を評価するのに適しています。多くの国際規格(絶対判定基準)では、この実効値が採用されています。

ピーク値(PEAK)
ピーク値は、振動波形の最大振幅を示す指標です。瞬間的な衝撃力を捉えるのに適しており、ベアリングの剥離や歯車の欠けなど、初期段階の「衝撃的な異常」を検知する際に威力を発揮します。実効値に変化が現れる前の微細な衝撃を捉えることができるため、ベアリング診断においては実効値とピーク値の両方を監視することが鉄則です。

振動監視における加速度・速度の使い分け

どの周波数帯域を、どの物理量(加速度・速度)で測るか」という使い分けは非常に重要な要素です。

振動速度(5Hz ~ 1kHz):機械全体の健康診断
振動速度は、主に「機械全体の振動エネルギー」を評価するために使われます。ISO規格の絶対判定基準も、多くはこの範囲の速度実効値(RMS)で規定されています。

主な監視対象: アンバランス、ミスアライメント、基礎の剛性不足、ボルトの緩みなど

振動加速度(1kHz ~ 10kHz):軸受(ベアリング)の初期診断
振動加速度は、振動速度に比べて「高周波の微細な衝撃」を捉える能力に長けています。

主な監視対象: ベアリングの金属接触、剥離、歯車の小さな欠けなど

簡易診断業務に特化した無線振動監視システムWASABI

WASABIは巡回点検に代わる無線振動監視システムです。簡易診断で必須とされる周波数応答性能があり、工場内での使用を想定した通信距離、化学工場での使用を考慮した防爆認証など保全員が必要とする仕様を兼ね備えています。

<主な特徴>
・振動加速度(1K~10KHz)のRMS/PEAK、振動速度(5~1KHz)のRMS/PEAKのデータ取得
・LoRa無線機による長距離通信により、見通し500mの通信距離を実現
・子機と親機それぞれに防爆認証を取得
・ソフトウェア上で、リスト表示、しきい値設定、警報履歴、保全履歴が登録可能

結論

状態監視を効果的に運用するためには、簡易診断による「定量的かつ継続的な傾向管理」と、精密診断による「論理的な原因究明」の連携が不可欠です。工場内に設置された何百台もある設備でも、簡易診断で広く浅く異常の有無をスクリーニングすることで、異常が見つかったものだけを診断するという効率的なメンテナンス業務を実現できます。

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