設備監視ソリューションProduce by イージーメジャー

コラム

WASABI

数百台の設備を少人数でどう守るか

―化学工場の保全員が抱える”巡回の限界”と突破口―

1日8時間で、何台の設備を巡回できるか

少し具体的に考えてみます。
1台の設備を巡回・点検するのに、移動・測定・記録を含めて平均10分かかるとします。 1日8時間の勤務時間のうち、巡回に使える時間を6時間とすると、1人が1日に回れる設備はおよそ36台が上限です。
では、あなたの工場に設備が300台あったとしたら? 1人では毎日全台を巡回するのは物理的に不可能です。 3人いても100台ずつを担当することになり、すべての設備を毎日点検することはできません。
この計算、頭の中でしたことはないでしょうか。あるいは、実際にこの現実と日々向き合っていないでしょうか。

「見逃し」は、怠慢ではなく構造的な問題だ

突発故障が起きたとき、「なぜ気づかなかったのか」という問いが必ず出てきます。 しかし多くの場合、原因は保全員の注意不足でも、点検の怠慢でもありません。
巡回できる台数に、物理的な上限があるという構造的な問題です。
設備の数が多ければ多いほど、どうしても点検の頻度を下げるか、優先度の高い設備に絞るかしかなくなります。優先度が低いとされた設備が突然故障したとき、それは「見逃し」ではなく「回りきれなかった」というのが正確な表現です。
現場の保全員は、限られた人数でできる限りのことをしています。問題は個人の努力の量ではなく、人の足で巡回するというシステム自体の限界にあります。

なぜ保全員の数は増えないのか

「人を増やせばいい」という話は、現場では通りません。
製造業全体で技術系人材の不足が深刻化しており、設備保全の知識と経験を持つ人材の確保はどの企業でも難しくなっています。採用できても、一人前の保全員として現場で動けるようになるまでには年単位の経験が必要です。
一方、設備の老朽化と台数の増加は止まりません。 定年退職によるベテラン保全員のノウハウ流出と、設備台数の増加が重なることで、「人手が足りない」という状況はこれからさらに深刻になっていく構造があります。
人を増やすことで解決できないなら、巡回というやり方そのものを見直す以外に道はありません。

“時間基準”の点検が生む、二重のムダ

人手が足りない中で多くの現場が採っているのが、「〇日ごとに点検する」という時間基準の巡回スケジュールです。
この方法には、構造的に2種類のムダが生まれます。
ムダ①:問題がないのに点検する「過剰整備」
スケジュール通りに点検・部品交換を行うと、まだ十分に使える部品を交換してしまうことがあります。これを「過剰整備」と呼びます。消耗品コスト・工数・設備停止時間、すべてがムダになります。
ムダ②:次の点検日まで異常に気づかない「見逃しリスク」
7日ごとの点検サイクルなら、点検翌日に異常が始まっても次に気づくのは最大6日後です。 その間に故障が進行し、最悪の場合は部品交換で済んだものが設備の全損になるケースもあります。
「ちょうど点検日の前日に壊れた」という経験をお持ちの方は少なくないはずです。

「設備の状態を、常に知っていたら」という発想の転換

では、どうすればこの問題を解決できるのか。
答えはシンプルです。設備の状態を常に知っていれば、「問題がある設備だけに行けばいい」。
設備の振動値を常時モニタリングし、異常の兆候が現れたときだけアラートが上がる仕組みがあれば、保全員の行動は根本的に変わります。
【現状:時間基準の巡回】
すべての設備を → 決められた周期で → とにかく回る→ 問題がある設備も、ない設備も、同じ手間をかける
【変化後:状態基準の対応】

設備が自分でデータを報告 → 異常の兆候があればアラート→ 保全員は「呼ばれた設備だけ」に集中できる。
この発想の転換を可能にするのが、設備に振動センサを取り付けて常時データを収集するという仕組みです。

「全台に有線センサを付ける」が現実的でない理由

「ならばセンサを全台に付ければいい」という話になります。しかし有線式のセンサシステムには、大規模導入を阻む現実的な壁があります。
電源・信号ケーブルの配線工事が必要
1台に配線すれば済む話ではなく、数百台となれば配線ルートの確保・電源工事・制御盤への組み込みが必要になります。工事のための設備停止・工期・コスト――大規模になるほど負担は跳ね上がります。
アクセスしにくい設備への配線が困難
稼働中の回転体周辺・高所・防爆エリア・屋外の遠隔設備など、物理的にケーブルを引けない場所が必ず存在します。
台数が増えるほど配線管理が複雑になる
数百本のケーブルが走るシステムは、後から変更・追加するたびに工事が発生し、メンテナンスコストが積み上がります。

無線振動センサが、巡回の限界を超える

こうした課題を解決するために開発されたのが、電池駆動の無線振動監視システムです。
イージーメジャーのWASABIは、920MHz帯LoRa無線を採用した産業用の無線振動センサシステムです。化学工場での実際の導入事例をもとに、どう現場が変わったかを整理します。

課題①「監視設備が多すぎる」への対応
WASABIは1台の親機に子機(センサユニット)を最大1,200台まで接続できます。 最大15グループまで拡張できるため、数百台・数千台規模の設備も段階的に監視対象に加えていくことができます。
「設備が多すぎて全部は無理」という理由がなくなります。
課題②「アクセスしにくい設備が監視できない」への対応
電池駆動なので電源工事は不要です。センサを設備に取り付けるだけで監視が始まります。 通信距離は見通し500m以上。中継機を最大2段設置することで、工場の端から端まで無線でカバーできます。
「行けないから見ていない」設備がなくなります。
課題③「時間基準点検でのムダと見逃し」への対応
センサが常時データを収集し、振動値が設定した閾値を超えるとPC上で警報が鳴動します。 保全員は「アラートが出た設備に対応する」という動き方に変わります。
問題がない設備への巡回は不要になり、アラートが出た設備に集中できます。
課題④「ベアリング異常を見逃したくない」への対応
WASABIは10KHz帯域までの振動計測に対応しています。ベアリングの初期異常は高周波帯域に現れる特性があり、この帯域をカバーすることで、外観点検では気づけないベアリングの早期劣化を検知できます。

保全員の仕事は、なくなるのではなく「変わる」

無線振動センサを導入すると、保全員の仕事量が減るのではないかという心配をされることがあります。実際には、仕事の内容が変わるというのが正確な表現です。
巡回点検という「全台を定期的に回る」作業から、アラートに基づいて「本当に対応が必要な設備に集中する」作業へ。移動とルーティン点検に使っていた時間が、故障原因の分析・修理計画の立案・改善提案といった高付加価値な業務に使えるようになります。
人が減らせるのではなく、同じ人数でより多くの設備を、より高い精度で守れるようになる。それが、無線振動監視が保全現場にもたらす本質的な変化です。

「まず重要な設備から」始める導入ステップ

数百台すべてを一度に監視対象にする必要はありません。電池駆動のワイヤレス設計だからこそ、気になる設備に1台から試すことができます。
Step 1:特に重要な設備・気になる設備 数台〜十数台でスタート
Step 2:振動データの傾向を把握、警報しきい値の調整
Step 3:効果を確認しながら監視対象を段階的に拡大
Step 4:全体的な常時監視体制の完成
「大規模投資をして全台一斉導入」ではなく、効果を確かめながら着実に拡大していけることが、現場での採用判断を後押しします。

まとめ

「巡回の限界」は、保全員の努力や能力の問題ではありません。人が足で回るというシステムそのものが持つ、物理的な上限です。
その限界を超えるために必要なのは、設備が自らデータを報告し、異常があれば知らせる仕組みです。

課題現状無線振動監視導入後
設備台数が多い全台を巡回できない最大1,200台を1グループで常時監視
アクセス困難な設備見逃しリスクが高い電池駆動・無線で設置場所を選ばない
時間基準のムダ過剰整備と見逃しが同時に発生状態変化をとらえて必要なときだけ対応
ベアリング異常外観点検では早期発見が困難10KHz対応で初期兆候を検知

数百台の設備を少人数で守るための答えは、「もっと人を増やすこと」ではなく、「設備自身に報告させる仕組みを作ること」にあります。

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