―LoRa振動センサが解決した実例から学ぶ設置の考え方―
有線センサが「使えない」現場は、思った以上に多い
設備の異常を振動で検知したい。その意思はある。センサの重要性も理解している。 それでも「あの設備には、どうしても有線で監視を入れられない」と諦めた経験はないでしょうか。有線式の振動センサは信頼性が高く、精密診断の分野では今も主力の手段です。 一方で、現場には有線設置の”物理的な壁”が存在することも事実です。
・ケーブルを這わせるルートが確保できない
・設備が動いているため、常時ケーブルが接続できない
・人が近づけないエリアに設備がある
こうした現場で力を発揮するのが、920MHz帯LoRa無線を採用した無線振動センサです。 本記事では、有線では対応困難な3つの現場タイプを取り上げ、それぞれでLoRa無線センサがどのように課題を解決できるかを、設置の考え方とあわせて解説します。
現場①:騒音のある場所(大型コンプレッサー・粉砕機などの駆動部)
なぜ有線設置が難しいのか
工場内の大型コンプレッサーや粉砕機などの周辺は、常に激しい稼働音や高周波の騒音に包まれている設備です。こうした騒音環境下にある設備は、周囲の他の配管や既存の配線ルートと複雑に入り組んだ場所に設置されていることが多く、後付けで地上や中央監視室から固定ケーブルを接続することは構造上困難です。
新規にケーブルを取り回すとすれば、騒音源となる振動や熱を避けるための特殊な防振・耐熱ダクトを設け、複雑な経路に沿って配線を引き回す大掛かりな改造工事が必要になります。当然、設備停止を伴う工事期間と多大なコストが発生します。
結果として「設備の異音や異常振動は気になるが、監視は防音保護具(イヤーマフなど)を着用した作業員による巡回点検で対応するしかない」という現場が少なくありません。
LoRa無線センサによる解決アプローチ
電池駆動のLoRa振動センサなら、激しい騒音を発する設備の駆動部・減速機・モーターに直接取り付けるだけです。センサ自体が電池で動作し、LoRa無線でデータを親機に送信するため、防音壁をまたいだり、複雑な配線経路を確保したりする物理的なケーブル接続は一切不要です。
設置のポイント
・手軽な着脱: 子機は磁石で取り付け可能なため、高騒音エリア内の金属筐体への着脱も容易
・安全なデータ取得: 騒音や振動が激しく、人が近づくのが危険な稼働状態であっても、離れた場所から安全に振動値を取得できる
・安定した無線通信: 親機を騒音エリア外の障害物が少ない固定構造物に設置することで、遮蔽物を避けて安定した通信距離を確保できる
巡回点検では「激しい騒音のせいで、人間の耳や感覚では初期の異常(異音・微細な振動)を捉えられない」という限界がありましたが、LoRa無線センサは騒音に影響されることなく、稼働中のリアルタイムな数値を収集できる点でも大きなアドバンテージになります。
現場②:屋外・離れた場所にある大型タンク・屋外ファン
なぜ有線設置が難しいのか
貯槽タンクに付属する攪拌機や、建屋屋上・屋外に設置された大型冷却ファン・排気ブロワは、制御室や電源盤から物理的に離れた場所に設置されていることが多い設備です。
有線センサを導入しようとすると、数十メートルから場合によっては100メートル以上にわたるケーブル敷設工事が必要になります。屋外であれば防水・耐候対応の配管処理も必須となり、工事費用は相当なものになります。
また、屋外タンクのような設備は「監視の優先度は高いが、監視予算は限られている」というケースも多く、コスト面から有線導入を断念する現場が多く見られます。
LoRa無線センサによる解決アプローチ
WASABIが採用するLoRa無線は、見通しで500m以上の通信距離を持ちます。 これは屋外の広大なプラントや工場敷地をカバーするのに十分な距離です。
設置のポイント
・センサを設備に取り付けるだけで、配線工事なしに監視開始が可能
・親機1台で最大1,200台の子機に対応するため、敷地内の複数タンク・複数ファンを一元管理できる
・通信が届きにくいエリアには中継機を追加することで、最大2段の中継によりエリアをさらに拡張可能
・防爆認証取得済みのため、可燃性ガスが漂うおそれのある屋外危険区域にも設置対応
「あのタンクは遠すぎてケーブルが届かない」という理由で諦めていた設備も、LoRaならセンサ設置だけで監視体制を構築できます。
現場③:高温環境・人が近づけない危険エリアの設備
なぜ有線設置が難しいのか
溶鉱炉、焼却炉、高温プロセス炉の周辺に設置されたポンプや送風機は、常に高温環境に晒されています。 こうした環境では定期的な巡回点検自体が作業員の安全リスクになり、「できれば近づかずに監視したい」というニーズが生まれます。
しかし、高温環境では一般的なケーブルや電子部品の耐久性に限界があり、有線センサのケーブル取り回しにも特殊な耐熱処理が必要になります。 また、石油・化学プラントの防爆エリアでは、通常の電気工事自体が厳しく制限されています。
LoRa無線センサによる解決アプローチ
LoRa無線センサの最大の利点のひとつが、人が近づかずにデータを収集できることです。 センサを設備に設置しさえすれば、その後のデータ収集はすべてPCやシステム上で完結します。
設置のポイント
・危険区域での使用を想定した防爆認証取得済み(親機・子機ともに対応)
・一度設置すれば電池交換まで長期間ノータッチで運用できるため、危険エリアへの立ち入り頻度を最小限に抑えられる
・振動値が閾値を超えた際にPC上で警報が鳴動するため、「近づいて点検する必要が生じたとき」だけ人が対応する運用が可能
「監視のために定期的に危険な場所に入る」という状況そのものを減らすことが、LoRa無線センサの安全面での大きな価値です。
3つの現場に共通する「設置の考え方」
事例を通じて見えてくるのは、LoRa無線センサを活かすための共通した設置思想です。
① ケーブルの物理的制約から設計を解放する
「どこにケーブルを這わせるか」ではなく「どこに設備があるか」だけを起点に設置場所を決められる。これがワイヤレス設計の本質的なメリットです。
② 電池寿命を前提とした長期運用設計
WASABIの子機は最大10年間の電池寿命を実現しています。「設置したら維持管理の手間がかかる」という懸念が少なく、危険エリアや高所などアクセスが難しい場所での長期設置が現実的になります。
③ 通信設計は「距離」より「経路」で考える
LoRaは距離だけでなく、金属構造物や壁を回り込む伝搬特性を持ちます。広いプラントでも中継機を適切に配置することで、死角を作らない通信ネットワークが構成できます。設置前に簡易な電波確認を行うことが、安定運用への近道です。
まとめ
「有線ケーブルが届かないから監視を諦めていた」現場は、LoRa無線センサによって監視可能な現場に変わります。
| 現場タイプ | 有線の課題 | LoRaによる解決 |
| 騒音のある場所 | 工事が複雑。巡回点検も難しい | 電池駆動・無線で稼働中も取得 |
| 屋外タンク・ファン | 長距離配線工事が高コスト | 500m以上の無線通信で工事不要 |
| 高温・危険エリア | 立入りリスク・防爆制約 | 防爆対応・遠隔収集で接触機会を削減 |
監視したくても手が届かなかった設備への第一歩として、まず1台の試験導入から始めることができます。